80年代後半~90年代前半のスポーツカー 中古車相場高騰続く

スポーツカーの中古車相場が高騰している。特に目立つのが、1980年代後半~90年代前半に生産された車歴30年前後の車両だ。トヨタ自動車の「AE86型スプリンタートレノ/カローラレビン」や日産自動車の「スカイラインGT―R」などは、希少性の高さや趣味性から中古車オークション(AA)で高値の取引が続いている。

走行距離や車両状態にもよるが、中には当時の新車価格を上回るものも少なくない。相場高騰の背景には、海外での日本車人気も大きく影響している。

人気車種はこれまでの一部車種だけにとどまらず、スポーツカー全体に広がりつつある。

スカイラインGT-R専門店を展開していたMANABOON(境学社長、神奈川県相模原市)は、取り扱い車種をスポーツカー全般にシフトした。それでも、展示車両を充足させるのは容易ではないという。

日産「シルビア」やホンダ「シビック」などは、90年代前半の年式でも5速マニュアルトランスミッション(MT)で走行距離が少なければ、車両価格が300万円を超えることは珍しくない。製造から25年以上が経過したにも関わらず、当時の新車価格を上回る価格水準だ。

購入客層は若者からシニアまで幅広い。ただ、購入価格が割高なだけに「子育てを終えた50歳代からのシニア層が昔から憧れていたクルマとして購入するケースが目立っている」と、フジカーズジャパン柏店の神長敬文副店長は話す。

ネットによるクルマ探しの利便性が高まったことも、人気車種を巡る競争や相場に大きく影響している。CAR工房(長谷川茂社長、神奈川県相模原市)は、「車種によっては問い合わせが全国各地から相次ぐ。現車確認なしの取引となる場合が大半だ」という。

スポーツカーの中古車相場が高騰する要因として、海外からの引き合いを指摘する声もある。クルマやレースのゲーム、漫画の影響で日本のスポーツカー人気が高まっているためだ。米国では製造から25年以内の車両の輸入を禁止する「25年ルール」が適用されている中で、90年代前半の車種が同規制から外れ始めた。

このため、従来は中古車輸出を行っていなかった中古車販売事業者の中から、「利益確保を狙って米国や豪州の一般ユーザー向けに販売を始めた」(MANABOONの境社長)事例も増えているようだ。

大変革期に直面する自動車産業。自動車メーカー各社は、限られたリソースをCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)関連に振り向けている。今後も継続して多額の投資が必要となる中、量販が見込めないスポーツカーの新型車開発は厳しいのが実情だ。

車種再編などで開発・生産中止となったモデルも少なくない。海外需要の高まりを受けて輸出がさらに増えれば、国内の中古車流通台数も影響を受けるだけに、今後もスポーツカーの中古車相場高騰は続く可能性が高い。

日刊自動車新聞6月19日掲載