ペダル踏み間違い時加速抑制後付け、装着進まず 補助金申請、想定下回る

高齢者を対象にした自動車のペダル踏み間違い時の加速を抑制する後付け装置の装着が進んでいない。政府は2020年3月からサポカー補助金の一種として後付け装置の購入に補助金を支給する制度を開始したものの、利用者は低迷したまま自家用車の申請受付けが10月末で終了した。

悲惨な事故を抑止するための制度だったが、「装着率は想定していたよりも低い」(自動車メーカー)状況。衝突被害軽減ブレーキなどの普及で交通事故死者数や事故件数は減少傾向にあるものの、先進技術を搭載していない既販車の安全対策が改めて問われる。

ペダル踏み間違い時の加速を抑制する後付け装置の装着を支援する制度は、次世代自動車振興センターが認定した後付け装置を、65歳以上のユーザーが購入した場合、最大4万円を支給する制度で、自家用車の申請が10月末で締め切られた。

最終的な申請件数は集計中だが、10月22日時点で申請が認められたのは約4万件にとどまる。後付け装置は、11月末に申請受付が終了となる事業用と合わせて約31万9千件の申請を見込んでいたが、これを大幅に下回る見込みだ。

トヨタ自動車は20年夏、機能を向上するとともに、価格を抑えた第2世代の製品を開発して展開したものの「対象車種の保有に占める販売比率は3%。想定していたより売れていない」(担当者)という。同じく20年夏に装置を市場投入したホンダアクセスも「(装着は)伸び悩んでいる」とする。

ある自動車ディーラーでは「高齢の既納客を対象にダイレクトメールなどを使って補助金制度を啓発してきた」とするものの、補助金制度の導入から時間が経過するにつれて販売が鈍っていったという。

補助金制度があっても後付け装置が普及しない原因として、制度の認知度以外に「高齢者向け製品の売り方に難しさがある」(ホンダアクセス)と指摘する声もある。

既販車のユーザーが、カー用品を購入するためだけに販売店を訪れるケースがほとんどないことに加え、販売店の営業員が提案すると「高齢者扱いされた」と気分を害するユーザーも少なくない。こうした経験から営業スタッフが後付け装置の提案に消極的になり、普及が進まなかった面もある。

65歳以上の自家用車を対象とする補助金制度が終了したことから、今後、運転免許を取得したばかりの若者などに後付け装置の装備を呼びかける活動を展開するトヨタ系の販売店もある。

ペダル踏み間違い時の加速を抑制する先進安全装備の普及によって国内の交通死亡事故や交通事故発生件数は減少傾向にある。11月からは乗用車の新型車を対象に衝突被害軽減ブレーキの装備が義務付けられた。

ただ、国内の四輪車保有台数7800万台の多くが、これらの先進装備を装着していない。補助金を支給しても普及しない既販車の安全対策をどう進めていくのか、自動車業界全体の課題として重くのしかかる。