中級クラスミニバンの市場で人気車の全面改良が相次ぐ中、半導体不足や部品供給網(サプライチェーン)の混乱が販売に水を差す格好になっている。トヨタ自動車とホンダは主力車を全面改良し、いずれの車種も受注が好調に推移している。
商品力が上がった新型車の投入で市場の活性化に期待がかかる一方、長納期化が販売に与える影響は避けられそうにない。人気が高まるミニバンだが、販売増には長納期の早期解消が不可欠となりそうだ。
トヨタは1月に「ノア」「ヴォクシー」を、ホンダは今月「ステップワゴン」をそれぞれ全面改良し発売した。居住性や安全性能、環境性能などの向上を図るとともに、それぞれ特徴的なデザインを取り入れ、差別化を図った。
受注状況についてステップワゴンの開発責任者である蟻坂篤史氏は、「想定を上回るスタートを切った」と話し、足元での受注状況は好調に推移している。
各車種の納期はノア、ヴォクシーが6カ月以上、発売したばかりのステップワゴンでも、ガソリン車が約4カ月、ハイブリッド車が約5カ月を要する。いずれの車種もサプライチェーンの混乱によって納期が長くなっている。
日産自動車は「セレナ」をラインアップしている。「納期は3、4カ月くらい」(販売関係者)で、サプライチェーン混乱などの影響によって納期が通常よりも長くなっており、競合他車と同程度の期間を要している。
セレナは、2016年以来、全面改良を行っていない。最新型の競合車に比べ、商品力が劣る部分も出てきており、販売現場からは全面改良を期待する声も少なくない。
市場全体では、慢性的な半導体不足により長納期が常態化していたところに、中国・上海を中心とするロックダウン(都市封鎖)がサプライチェーンの混乱に拍車をかけた。このため国内市場全体で車両供給の不安定な状況が続いている。
中級クラスのミニバン市場は、主力車の全面改良で、市場活性化への期待が高まっている。メーカー各社は長納期化の解消に向けた努力を進めており、ホンダでは6月上旬の工場稼働が通常に戻る見通しを発表した。状況が改善される兆しも一部で見え始めており、供給正常化への期待も高まっている。
日刊自動車新聞5月28日掲載