EV普及へ「電池」コスト引き下げ競争本格化 リサイクルも不可欠

電気自動車(EV)の車両販売価格を大きく左右する電池のコストを引き下げる取り組みが本格化している。EVの本格的な普及には、車両価格が高くなる最大の要因である電池のコストを引き下げる必要がある。自動車メーカーや電池メーカーが電池材料や製造工程の見直しなどによる電池本体のコストダウンに加え、使用済み電池のリユースや電池材料のリサイクルによってライフサイクル全体を見据えてコストを下げる取り組みが進む。

「(EVの普及には)バッテリーのコストが最も大事。バッテリーはEVのコアであり(電池メーカーと)一緒に開発してコストを下げていく」―。今月4日、日産自動車のアシュワニ・グプタCOO(最高執行責任者)は、20%出資するエンビジョンAESCジャパンがリチウムイオン電池製造拠点を茨城県内に新設することを発表する記者会見に出席し、エンビジョンとの連携を強化していく方針を改めて強調した。

日産は英国のサンダーランド工場をカーボンニュートラル化の戦略拠点として、新しいクロスオーバーEVを生産するための投資を決定、これに合わせてエンビジョンAESCが同工場隣接地に電池製造拠点を新設する。EVシフトに大きく舵を切る日産にとってエンビジョンAESCは「グローバルなストラテジーパートナーシップとしてやっていく」(グプタCOO)存在だ。

脱炭素社会に向けて電動車シフトの本格化が見込まれる中、自動車メーカーと電池メーカーの関係を強化する動きは世界中で見られる。EVにとって電池が性能やコストなど、競争力に直結するキーデバイスだからだ。フォルクスワーゲン(VW)グループやボルボ・カーズはそれぞれスウェーデンのノースボルトと連携することで合意。

中国の寧徳時代新能源科技(CATL)や韓国のLG化学は、多くの自動車メーカーと関係を深めており、電池のコストダウンを図るための研究開発や、生産能力を増強するための巨額投資を実行している。

使用済み車載用電池をリサイクルする仕組みづくりも進む。日産と住友商事の合弁会社フォーアールエナジーは、日産のEV「リーフ」などから回収した使用済み電池を再利用し、再生可能エネルギーを貯蔵する電池や、災害時のバックアップ電源などに再利用する事業の確立を狙う。

中国でも使用済みの車載電池を市場から回収して劣化していない電池材料をリユースする取り組みが進む。今後、使用済み電池の回収義務付けが検討される見通しだ。欧州では車載用電池などに関する環境規制が強化され、27年1月からは原材料のうち、リサイクルされた原材料の使用量を開示することが義務付けとなる。

使用済み電池リサイクルシステムを確立できれば、市場で急激に低下しているEVの再販価値が改善し、EVの残価設定ローンやリースでの支払い価格を抑えることにつながる可能性がある。

自動車メーカーの電動シフトによって今後、膨大な量の電池材料が必要となる。電池材料や電池を再利用するシステムの確立はEVのコストに大きな影響を及ぼすだけに、今後の動向が注目される。